「ご飯のお供」には梅干し、漬物、佃煮など多くの種類がありますが、私が特に美味しいと感じるのが「辛子明太子(からしめんたいこ)」です。
辛子明太子は、スケトウダラの卵巣(たらこ)を唐辛子などで漬け込んで作ります。ご飯にのせるだけでなく、パスタに和えたり、様々な料理に活用できる万能食材です。
明太子の語源や日本の主流「漬け込み型」の起源
明太子の語源については、アニメ「美味しんぼ」の108話<辛し明太子>で興味深い説明がありました。
朝鮮語でスケトウダラを「明太(ミョンテ)」と呼ぶことから、「明太の子」が訛って「明太子」になったとのことです。
製法は「まぶし型」や「漬け込み型」がありますが、現在日本で主流となっている「漬け込み型辛子明太子」は朝鮮で生まれ育った「ふくや」の創業者・川原俊夫氏が製造・販売したことが始まりです。
昭和23年、博多・中洲で小さな食品店を営んでいたふくや創業者・川原俊夫は「お客様に喜んでもらえるものを売りたい」と、自身の幼少期に韓国・釜山で食べていた“韓国風に味つけされたたらこ”を日本人の口にあうように工夫する事を思いつきました。
自身の記憶と舌を頼りに生まれた味は、たらこの親魚スケトウダラの朝鮮語「ミョンテ(明太)」とその卵(子)という意味から「明太子」と名付けられ、昭和24年1月10日に日本で初めて店頭に並べられました。
→当ブログの記事:ふくやの家庭用明太子は切れ子でも絶品!辛子明太子の起源メーカーの伝統と味
川原氏は辛子明太子の商標登録や製造法の特許を取得せず、代わりに地元の同業者に製法を教えました。
この寛大な姿勢により、博多で多種多様な辛子明太子が製造・販売されるようになりました。
結果として、「辛子明太子=博多」というイメージが定着し、地域の名物として広く知られるようになったのです。
この歴史的背景から、現在の福岡県には数多くの辛子明太子メーカーやお店が存在します。
そのため、どのメーカーのどの商品を選ぶべきか迷う人も多いでしょう。正直なところ、私自身もその選択に悩むことがあります(笑)
千曲屋:新進気鋭の博多明太子メーカー
今回私が購入したのは、福岡市博多区東那珂に本社を置く「株式会社 千曲屋(ちくまや)」の辛子明太子です。
数ある明太子メーカーの中から千曲屋を選んだ理由は、実は単純。近くの大型モールのギフトコーナーで見かけた際、その商品写真が特に美味しそうに感じたからです(笑)
千曲屋の歴史と経営理念
千曲屋は比較的新しいメーカーです。平成19年に、大阪の魚卵専門メーカー「タケショク」の社長が福岡で設立しました。
歴史ある明太子メーカーが多い福岡では、新進気鋭の企業と言えるでしょう。
同社は「うまいを気軽に、うまいを毎日、うまいをあなたへ。」というキャッチコピーを掲げており、これは同時に彼らの経営方針でもあるそうです。
福岡県は辛子明太子の生産量も消費量も日本一を誇ります。しかし、千曲屋の社長が福岡に来て驚いたのは、この地で明太子が主に「高級品」や「贈答品」として扱われ、日常の食卓にはあまり登場しないという現実でした。
原点回帰し、"普段のおかず"として、家庭で毎日明太子を食べてもらうための味付けや価格設定にこだわったものが「千曲屋の辛子明太子」とのことです。
千曲屋の辛子明太子:こだわりの製法と味
千曲屋の明太子製造工程
千曲屋の辛子明太子は、ロシアやアメリカ産のスケトウダラの卵巣と天日塩、京都の老舗香辛料メーカーに製造してもらった辛みを抑えた唐辛子を使った「明太調味だれ」に72時間以上漬け込み熟成させて作られます。
解凍・凍結技術へのこだわり
千曲屋は、海産物商品の味や品質を大きく左右する解凍や凍結にも特別なこだわりを持っています。
- 解凍時:マイナスイオンと赤外線を利用し、卵の細胞を破壊せずに旨味(ドリップ)を保ったまま解凍。
- 凍結時:「HACCP対応ウイングバード」というシステムを使用し、解凍時と同様に細胞を破壊せずに高品質のまま凍結 。
化学調味料と辛子明太子:美味しんぼの視点と実際
1点気になったのは原材料にたくさんの「化学調味料」が入っていたことです。
これは千曲屋に限らず、ふくやをはじめとするほとんどのメーカーの商品に大なり小なり含まれています。
「美味しんぼ」では、化学調味料を大量に使った辛子明太子づくりを痛烈に批判していました。
同作品での山岡さんおすすめの作り方は、質の良いスケトウダラの卵巣を昆布で包んで数日置いた後、辛みの少ない韓国産唐辛子の粉末の中で転がすというものでした。
しかし実際に千曲屋の明太子を食べてみると、「化学調味料を使った辛子明太子特有の舌が麻痺するような感じ」は全くなく、普通に美味しく感じられました。
実食レビュー:千曲屋の辛子明太子を食べてみて
今回購入した明太子は、大きなものから小さなものまで、様々なサイズの明太子が混在していて、不揃いさが少し目立ちました。
この点について思い出したのが、先ほど触れた「美味しんぼ」の108話です。
この回で主人公の山岡さんが辛子明太子の大きさについて興味深い説明をしています。
- スケトウダラの産卵期は1月~4月だが、漁獲を急いで産卵期より早く獲ったりすると卵はまだ十分に成熟していないものになる
- 十分に成熟した大きい卵巣は卵の粒が大きく味もよく乗っているが、成熟していない小さい卵巣は卵の一粒一粒が小さく味も悪い
- 例えば小さな卵巣の辛子明太子を焼くと、漆喰を固めたみたいに固く粉っぽくなって舌触りも味も悪い
やっぱりビッグサイズの明太子が正義なのでしょうね。
千曲屋の明太子は大きめサイズのものでこれくらい。
うーんでかい!
いつもスーパーで買って食べている安物とは全く違う立派な辛子明太子です。
早速ご飯に乗せて食べてみましたが、辛みがメインながら甘みや旨味もしっかり主張していてとても美味しかったです。
まとめ
辛子明太子は、朝鮮語でスケトウダラを「明太」と呼ぶことに由来し、日本での漬け込み型辛子明太子の始まりは「ふくや」の創業者によるものです。
その後、博多を中心に多くのメーカーが参入し、その中で比較的新しい「千曲屋」は素材と製法へのこだわりで高品質の製品を生み出しています。
実際に食べてみると、一般的な商品とは明らかに異なる味と質を感じ、非常に満足できました。
価格は「普段の食卓に並べられる」というほど手頃ではありませんが、月に1回程度や特別な機会には購入したいと思える品質です。
今後は「切れ子」や「バラ子」といったより手頃な商品も試してみたいと考えています。これらは形は不揃いですが味は変わらず、よりリーズナブルに千曲屋の美味しい辛子明太子を楽しめそうです。
#千曲屋の明太子 #博多明太子
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