以前、「こんにゃく米」についての記事を書きました。
記事の内容は「ゼンライス」という乾燥こんにゃく米を実際に食べてみた感想やコスパ計算などでしたが、記事を書く過程で不思議に思ったのが、「タピオカでんぷん、むかごこんにゃく粉」という全く同じ原材料表示の商品が名前だけ変えて複数のお店から販売されていることでした。
その疑問を発展させてこんにゃく米市場についていろいろと調べてみました。
同じ原材料の商品がなぜこんなにたくさん?
こんにゃく米を探していて最初に感じた疑問が「同じ原材料の商品がなぜこんなにたくさんあるんだろう?」ということでした。
楽天やAmazonなどのネットモールでこんにゃく米を探してみると、本当にたくさんの商品が出てきます。
しかし、原材料表示を見ると多くの商品で「タピオカでんぷん、むかごこんにゃく粉(インドネシア産)、貝カルシウム、ビタミンC」がほぼ同じ順序で記載されているんです。
「これって同じ商品を名前だけ変えて売ってるってこと?」そんな疑問が湧いてきました。
こんにゃく米市場の秘密
実際に業界関係者に話を聞いてみると、やっぱり予想通りでした。
市場に出回っている「タピオカでんぷん+むかごこんにゃく粉」系のこんにゃく米は、基本的に同じ技術で作られているんです。
この乾燥こんにゃく技術の中心にいるのが横浜のアイレス株式会社という会社。1988年設立で30年以上にわたって乾燥こんにゃくの研究開発を続けている専門企業で、インドネシアの工場(アンビコ社)に技術提供を行っているそうです。
普通にこんにゃくを乾燥させると元に戻らなくなってしまうんですが、特殊な糖液浸漬技術によって2年間常温保存可能な乾燥こんにゃくの製造が実現されています。
実際の製造は技術提供を受けたインドネシアの工場で行われており、現地で自生しているむかごこんにゃく芋を使用しているため、どの商品も原材料表示が同じになるんですね。
「なるほど、それで同じ表示なのか!」と納得しました。
パイオニアと後発組の違い
業界の人によると、市場を開拓したパイオニア企業と後から参入してきた企業では商品への関わり方が違うとのこと。
まず市場開拓の歴史が全然違います。
2008年に現在主流となっている乾燥こんにゃく米を商品化したのはゼンライスの販売元である伊豆河童(株式会社栗原商店)でした。
それ以前にも大塚製薬のマンナンヒカリなどこんにゃく米自体は存在していましたが、タピオカでんぷんとむかごこんにゃくを使った乾燥タイプのこんにゃく米というジャンルを開拓したのは同社だったとのこと。
同社はインドネシア工場との直接的な関係を構築し、商品仕様についても現地と継続的にやり取りを続けています。また、原料状態で仕入れて自社でパッケージングするなど、商品への関与度も高いのが特徴です。
一方、後から参入してきた企業の多くは代理店(アトア社)経由で完成品を仕入れる形。商品仕様への関与は限定的で価格競争に重点を置く企業も少なくないそうです。
ただし、同じ代理店から仕入れていても、わずかでも「違い」を作るために配合比率などを微妙に変えている可能性もあります。
パイオニアが築いた市場価値
昔は現在ほど乾燥タイプのこんにゃく米は認知されていませんでした。アイレスがベースを作り、伊豆河童がインターネットで積極的に商品を普及・販売したからこそ、今では多くの消費者が手軽に購入できるようになったんです。
実際に伊豆河童の中の人とやり取りする機会がありましたが、その対応の丁寧さと商品に対する深い知識に驚きました。
パイオニアとしての自信と自負、そして商品への愛情が伝わってくる内容で、今後も主体的にこのジャンルで新製品を開発したり現製品を改良していくのは間違いないと確信しました。
後発組が安売り競争を始める中で、パイオニアとしてのプライドを持ち続ける姿勢には本当に敬意を払いたいと思います。
まとめ
今回の調査を通じて、「同じ原材料なら同じ商品」という単純な考えだけでは判断できない商品の奥深さを知ることができました。
こんにゃく米に限らず、サプリメントなどの健康食品業界でも同様の構造は珍しくありません。一つの工場で作られた商品がパッケージや商品名だけ変えて複数のブランドで販売されることはよくあります。
しかし、大切なのはその背景にある企業の取り組みや市場への貢献度も含めて総合的に判断することだと感じます。
私自身、ブログで一生懸命調べて書いた記事を真似されたり、企画したものをパクられた経験があるので、パイオニアの悔しさや辛さはよく分かります。
市場が存在しない中での商品開発、消費者への認知・教育、失敗リスクの負担など、先駆者の苦労は計り知れません。
もちろん後発組も努力はしているんだろうけれど、売れるのが分かった後でパッケージや名前だけ変えてさも自分が作ったみたいな顔で販売しているのをみるとなんかズルいなと思ってしまいます(笑)
だからこそ、最初に市場を開拓した伊豆河童ならびにゼンライスを応援したいです。
同じに見えて実は違う商品の背景を理解することで、より賢い消費者選択ができるようになりますし、努力や苦労が報われる社会になればいいなといつも願っています。
#こんにゃく米 #ゼンライス
参考にさせていただいた記事・サイト