新型コロナ、戦争、そして過度な円安などで値上げラッシュが止まりません。
スーパーで食材を買うと多くの商品が1割2割高くなっていて驚きます。
所得がなかなか上がらない中での値上げに対して、今まで以上の倹約が必要だと思う今日この頃です。
そんな中、私が見つけたのが「ウルグアイ産の牛肉」です。
この記事ではウルグアイ牛肉を実際に食べてみた感想とその特徴、そして草臭さを軽減する方法を紹介します。
ウルグアイ牛肉を選んだ理由
我が家では基本的に牛肉をあまり食べず、主に鶏肉や豚肉を食べています。
➡(当ブログの記事)鶏の「かたこにく」とかいうやたらと美味しい謎の部位
その理由は主に2つあります。
1点目は外国産牛肉の肥育ホルモン剤(肥育促進剤)、そして2点目は国産牛の値段の高さです。
外国産牛肉と肥育ホルモン剤の問題
外国産牛肉の多くは飼育の際に「肥育ホルモン剤」(成長ホルモンとも呼ばれる)が使用されています。
これは牛の成長を促進し生産効率を上げるために使われますが、安全性には議論があります。
牛や豚などの成長(肥育)促進を目的に使用される動物用医薬品等。
天然型(17β-エストラジオール等)と合成型(酢酸トレンボロン等)の2種類が存在する。
肥育ホルモン剤を使用すると家畜の体重を増やす(成長速度を速める)効果が期待できるので、餌の量を減らしたり出荷までの日数を縮めるなど大きな経済的メリットを得られます。
文春の記事には利益が10%アップすると書かれていました。
しかし、肥育ホルモン剤を使用して育てた家畜を食べることで人間の健康を害するリスクがあるとして、食品の安全に厳しいEU(欧州連合)ははるか昔から輸入を禁止、近年では中国やロシアでさえも使用禁止を明言しています。
ただ、現在のところ肥育ホルモンが人体に対して様々な問題を引き起こすという科学的根拠はなく、さらに設定された残留基準値を超えたものの輸入は禁止しているとして厚生労働省は安全性を強くアピールしています。
我が国では、肥育促進剤が食肉中に残留し、摂取されたとしても、人の健康に悪影響を与えることがないように、食品中にそれらの物質が残留することが認められる最大の量(残留基準)を、科学的根拠に基づき定めています。
具体的には、国際的なリスク評価機関である FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)が定めている一日当たりの摂取許容量※を下回る範囲内で、肥育促進剤の残留基準を設定するとともに、基準を超える食肉の輸入や販売を禁止することで、食品の安全性を確保しています。
なお、世界的に見てもアメリカ、カナダ、オーストラリアで肥育促進剤の使用が認められており、国際基準(Codex 基準)においても、適正に使用される場合、人の健康への悪影響はないと判断されています。
確かに残留基準値をオーバーしていなければ問題はないと私も思います。
しかし、文春の記事には札幌市内のスーパーで購入したアメリカ牛肉の肥育ホルモン(エストロゲン)を測ってみると国産牛と比較して赤身で600倍、脂肪で140倍も高かったと書かれていました。
計測されたホルモン値が明らかに違う理由は測定法が違うからだとか。
ではなぜ日本は輸入しているのか。それは、1999年に旧厚生省が「アメリカ産牛肉の残留エストロゲンは国産牛の2~3倍程度」で、危険とはいえないと報告したからである。
2~3倍と600倍では天と地ほども違うが、これほど差が出たのは測定法が違っていたからだ。旧厚生省が使ったのはRIA法という古い検査法で、半田医師らが使った最新のLC-MS/MSにくらべ、精度は20分の1~100分の1だ。つまり旧厚生省の数値はいい加減ということになるのだが、いまだに最新の測定法で計測していない。
週刊誌の記事を鵜呑みにするのはどうかと思いますが、EUが長きにわたり高率の関税賦課などのペナルティを支払ってでも肥育ホルモン剤使用牛肉の輸入を禁止し続けているのには確かな根拠があるのだろうと思います。
個人的にも思い当たる節が多いので私は潜在的なリスクを避けるためにできる限り食べないようにしています。
ワクチンのように最初は重症化予防だけでなく感染予防効果も高く安心安全で副反応はほとんどないといわれていても時間が経ちデータが集まった結果、様々な問題が出てきたなんてこともありますからね。
日本でも肥育ホルモン剤については賛否両論あり、有名メディアでも意見が分かれているので読んでみると面白いですよ。
ウルグアイ牛肉の特徴と安全性
一方、国産牛は今のところ肥育ホルモンが使われておらず味も美味しいので毎日でも食べたいところですが、値段は外国産牛肉の数倍…。家で牛肉を食べるのは月に1、2回です。
そんな中、スーパーで偶然見つけたのがウルグアイ産の牛肉でした。
しかも私が一番大好きな部位であるミスジ(ハラミ)が売っているではありませんか!
※訂正:調べてみるとハラミは横隔膜の筋肉でミスジは肩甲骨の内側の部位とのことでミスジ=ハラミではありませんでした。どうやらサガリと勘違いしていたようです。
値段は100グラム198円(税抜)と安く、見た目も赤々としてとても美味しそう。
ウルグアイ産の牛肉はこれまで見たことがなく肥育ホルモン剤使用の有無や特徴も全く分からなかったので、すぐさまネットで調べてみました。
ウルグアイで生産される牛肉の多くは「Natural Beef」と形容され、輸出におけるプロモーションのキーワードとしても使用されています。
ウルグアイ食肉協会(INAC)によると、「Natural Beef」の定義は、(1)畜産副産物不使用(飼料に内臓肉などの畜産副産物を混ぜない)、(2)成長ホルモン不使用、(3)牧草肥育、であるとされています。
特に(3)については、同国の出荷頭数に占める牧草肥育牛の割合は85%に上り、「自然に近い形で飼養された赤身肉」をセールスポイントとしています。【レポート】「Natural Beef」(ナチュラルビーフ)を売りにするウルグアイ産牛肉の生産と対日輸出見通し|独立行政法人 農畜産業振興機構
放牧で飼育されているため飽和脂肪が少なく、オメガ6とオメガ3のバランスが良好です。また、CLA、鉄分、ビタミンE(抗酸化)の含有量も高いので健康志向の方におすすめです。
"成長ホルモン不使用"と書いてあるので安全性は問題なし。
その他調べてみて分かったことは、以下の通りです。
- ウルグアイは国土の80%以上が放牧に使用されており、牛1頭にサッカー場2つの面積に値する放牧地が与えられている
- ウルグアイで生産されている主な牛の品種はヘレフォードとアンガス
- 全国でトレーサビリティが義務付けられている
味についての評判は、美味しいという人もいれば臭くてまずいという人もいて好みが分かれる味といった感じ。
これは自分で食べてみて判断するしかないなと思い、とりあえず買ってみることにしました。
ウルグアイ牛肉の実食レビュー
ウルグアイ牛肉は草臭い
どんな味がするんだろうとワクワクしながら家に帰り、早速焼肉開始です。
➡(当ブログの記事)【IHで焼肉】ニトリのグリルパンは美味しく焼けて片付けも楽!
焼肉のタレにつけて食べてみると…
臭…草?
獣臭いわけではないけれど、国産牛と比べると明らかに草臭い…。例えるなら牛ではない他の哺乳類の味。
食べられないことはない、でも美味しくはない。というかまずい。
食感も硬すぎて噛み切れないとまではいかないけれど、柔らかい国産牛に比べると数段落ちます。
100グラム198円ならまあこんなものか、でも198円なら良い豚肉のほうがよほど美味しいなあと思いながら相方と一緒に会話なく黙々と食べなんとか完食。こんなに会話がない食事は久しぶりでした。
グレインフェッドビーフとグラスフェッドビーフ
見た目はこんなにきれいで美味しそうなのにどうしてこんなに草臭いんだろうと不思議に思い調べてみると、牛が普段食べているものが影響しているということが分かりました。
日本で一般的に多く流通しているのは"穀物"を与えられて育った「グレインフェッドビーフ」と呼ばれる牛肉。脂質が多めで柔らかくクセや臭みが少ないのが特徴です。
国産牛の他、アメリカ牛やカナダ牛、オーストラリア牛の一部がこの「グレインフェッドビーフ」。アメリカ牛は安いし味も日本人好みなんですよね。肥育ホルモン剤さえ使ってなければなあ…。
一方、ウルグアイ産牛肉は基本的に"牧草"のみを食べて育った「グラスフェッドビーフ」。脂肪が少なく赤身が多い肉質で香りが強いのが特徴です。
ただ、「グラスフェッドビーフ」が全て同じように草臭いのかというとそうではなく、牛の品種や土地の成分(鉄分や亜鉛、マンガン等)、加工方法など、生産から流通に至る様々な要素が影響しているとのこと。
安全性を確保しつつ安くて美味しい牛肉を生産するのは想像以上に難しいんでしょうね。
まあ、私を含め日本人の多くが「グレインフェッドビーフ」を食べ慣れているから美味しいと感じるだけで、日頃から「グラスフェッドビーフ」を食べている外国人の方にとっては日本産牛肉は脂っこくて味も香りも薄く美味しくないと感じるかもしれませんが。
ウルグアイ牛肉の臭み取りに挑戦!
ウルグアイ牛肉は私の口に合う味ではなかったけれど、値段の安さと肥育ホルモン不使用の安全性の高さはやっぱり魅力的。
草臭ささえ軽減できれば美味しく食べられるはずとネットで調べ3種類の方法を試してみることにしました。
まずはウルグアイ牛肉の確保から。
入荷数もそれほど多くなかったし、安くて見た目もきれいだからもしかしたらもう売り切れているかもと心配しながらスーパーに行くと…
ほとんど売れることなく結構な数が残っていました。3割引きのやつの色が酷い。
いくら安くてもあまり聞いたことのない国の牛肉を買うのはやっぱり抵抗があるんでしょうね。
ポップに「肥育ホルモン不使用で安全!」などと書いてアピールすればもう少し売れるかもしれないけれど、そんなことしたらメインで販売しているアメリカ牛やオーストラリア牛が危険みたいな感じになるからできないだろうし。
これはなかなか難しい問題だ。
とりあえず無事ウルグアイ牛肉を確保し家路へ。
購入したウルグアイ牛肉を「日本酒」、「100%パイナップルジュース」、「牛乳」にそれぞれ漬け込んでみました。
日本酒の効果
日本酒はアルコールが揮発する際に素材に含まれる臭い成分を一緒に連れ去る"共沸"と呼ばれる効果と、お酒に含まれる有機酸という成分によるマスキング効果などで臭みを取ることができるそう。
パイナップルジュースの効果
パイナップルジュースの臭み取りのメカニズムはよく分からないけれど、タンパク質を分解する"プロテアーゼ"という酵素が含まれており、その働きによって肉を柔らかくできるようです。
プロテアーゼはメロンやパパイヤ、イチジク、キウイフルーツなどの果物にも含まれていますが100%パイナップルジュースが安く買えたので使ってみました。
果物のフルーティな香りが気になるという人はキノコ類でも代用が可能。その中でも熱安定性が高いマイタケはおすすめです。
➡(当ブログの記事)雪国まいたけとホクトの舞茸を食べ比べ!業界のパイオニア作黒舞茸の味も
牛乳の効果
最後は牛乳。
牛乳の中にはタンパク質(カゼイン等)や脂肪の粒子がコロイド状に分散して存在していますが、その粒子は表面積が非常に大きく、いろいろな物質を吸着しやすい性質を持っています。
これらの粒子が肉の臭み成分を吸着し臭いを取ってくれるというわけですね。
液が浸みこみやすいように肉に穴を開けて半日ほど冷蔵庫で放置。
気になったのはパイナップルジュースに浸けた肉がすぐに白っぽく変化したこと。プロテアーゼのタンパク質分解パワーはかなり強そうです。
全ての方法で臭いの軽減に成功
半日漬け込んだ後に水気を取り前回と同じように焼肉に。
なぜか何もしないで焼いた時よりも肉から汁がいっぱい出て縮んでしまいました。縮んだ肉は案の定硬い…。
肝心の草臭さは日本酒、パイナップルジュース、牛乳の全てで軽減に成功!
日本酒は臭みだけを6割くらいカットし後は肉の自然な味、パイナップルジュースは肉にパイナップルのトロピカルな味が残っていて臭みを7割くらいマスキング、牛乳は臭み7~8割カットに加えて謎のコクがプラスされている感じ。
どの臭み取り方法でもそれなりに食べられる味になりましたが、個人的には牛乳を使用したものが一番国産牛に近いと感じました。
残念だったのはなぜか肉が硬くなってしまったこと。
肉を漬け込んでから焼くとどうしても縮んでしまうのか、それとも漬け込み時間が長かったのが原因なのか…。
そこで浮かんだのが肉を叩いてみたらもう少し柔らかくなるのではという考え。
「もう諦めたら?」という相方の声を振り払い3日連続ウルグアイ牛肉を買いにいきました。
結論:ウルグアイ牛肉の臭み取りは可能だが味は値段相応
肉たたきでしっかり叩いた後、牛乳に3時間程漬け込み、今回はフライパンで焼きます。
なぜグリルパンを使わないのかというと漬け込み肉を焼くとめっちゃ焦げるから。
今まで焼肉をしてもあまり焦げなかったグリルパンなのに焦げ焦げで洗うのにすごく手間がかかりました。
フライパンで焼いてもこのザマ。
肉からめっちゃ汁が出るんです。普通のフライパンなら焦げをタワシで擦りまくらなきゃいけなくなると思います。
しかし、私が愛用しているのは「エバークック」のフライパン。ティッシュで拭き取れば焦げは簡単に取れます。
フライパンが焦げて困るという人は是非エバークックのフライパンを試してみてください。
➡(当ブログの記事)【エバークック感想】IHでも焦げないフライパンという評判は本当だった
この最後の試みの結果は微妙なものになりました。
まず、フライパンで焼くよりもグリルパンで焼いたほうが肉が臭くない。フライパンだと肉から出た汁で煮るみたいな感じになってしまいグリルパンより臭みが残る感じがしました。
あと柔らかさに関しても多少は縮みがマシになったものの驚くような成果は出ず。やっぱり硬い。
料理って本当に難しいですね。
そう考えると買ってきたのをそのまま焼くだけでめちゃウマな国産牛はやっぱり偉大。
結論、ウルグアイ牛肉は漬け込みなどの一手間を加えれば臭みが軽減できてそれなりに食べられるようになるけれど、味はやっぱり値段相応。
#ウルグアイ牛肉
参考にさせていただいた記事・サイト
- ウルグアイビーフ|日本公式サイト
- 厚生労働省
- 独立行政法人農畜産業振興機構(alic)
- 専門機関は安全性を認める牛の肥育ホルモン剤。日本の規制状況やヒトへの影響について。|有限会社 矢野畜産
- 肥育ホルモン剤入り牛肉の輸入規制ない日本 そこにある食卓の危機|マネーポスト WEB
- 「ホルモン漬けアメリカ産牛肉」が乳がん、前立腺がんを引き起こすリスク|文春オンライン
- 「文春」「AERA」の「ホルモン漬け輸入牛肉が乳がんを増やす」は科学的根拠があるのか?|産経新聞
- 外国産のお肉は危険なの?ホルモン剤の実情を10分で解説|ホライズンブログ
- 各国の牛の飼育方法と、その味の特徴とは?|ビーフステーキジャーキーのテング
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