春の訪れを感じさせる野草の一つ『ツクシ(土筆)』。
散歩中にふと目に留まったツクシを見て子供の頃を思い出し、懐かしさに駆られて採取してきました。
ツクシの特徴と生態
ツクシとは、シダ植物門に属するトクサ科トクサ属スギナの胞子茎で、胞子嚢をつける茎のことを指します。
田んぼや畑、川の土手など、湿り気のある酸性土壌を好み、早春の3〜4月頃にスギナの地下茎から直接生えてきます。
ツクシから出た胞子が発芽し、オスとメスの配偶体となって受精すると新しいスギナが芽生えます。
ツクシが枯れた後、同じ地下茎から葉緑体を持った栄養茎(スギナ)が生えてきて光合成を行います。
冬になると地上部は枯れますが地下茎は生きており、切れることで新しい株を作って増えていきます。
ツクシの思い出
小学校低学年の頃、学校近くの用水路の側にたくさん生えていたツクシを友達と一緒に採り、一人の子の家に持ち帰ったことがあります。
そこで、その子のお母さんに教わりながらホットプレートでバター炒めを作りました。
お母さんはニコニコしていましたが、内心では「めんどくさいなぁ」と思っていたかもしれません(笑)
男の子5~6人が泥だらけになりながら大量のツクシを持って帰ってきて「いきなりツクシ料理を教えてほしい」ですからね。
今思い出すと感謝の気持ちでいっぱいです。
味の方は、大量に採ったわりになぜか実際に食べた量はほんのわずかだったような気がします。
でも、とても美味しかったのでもっとたくさん食べたいと思ったのを覚えています。
その後、成長するにつれて勉強や部活で忙しくなり、遊びもスポーツや釣りがメインに。
そのため、ツクシを食べる機会もなくなり、いつの間にかおじさん付近の年齢になってしまいました(笑)
ツクシの採取と注意事項、下処理の方法
ツクシは3〜4月頃が旬。胞子嚢が硬く締まった長さ10cm程度の若いものを選んで採ります。
成長しすぎているものは硬いので避けた方がいいかもしれません。
今回は、10分ほど採取して25本くらい持って帰ってきました。
もっとたくさん採ってもよかったんですが、ツクシにはアルカロイドや無機ケイ素などを含むため、多量の摂取は推奨されないみたいなのでほどほどに。
また、ニコチン過敏症の方や心臓や腎臓に疾患のある方は摂取を控えた方が無難だそうです。
袴外しが面倒なツクシの下処理
採ったツクシは水でよく洗い、1本ずつ胞子嚢(頭の部分)と袴(鞘状の葉)を取り除きます。
胞子嚢はまだ全然開いていない若いものなら取らずに食べる人もいるらしいけど、私はちょっと気持ち悪いので全部取ります。
袴は硬くて口に残りやすいので丁寧に外します。
この袴を取り除く作業がすごく面倒…。
ツクシ1本に3~4個ついてますからね。
爪で袴に切れ込みを入れてグルっと外していくと若干ではありますが取り除きやすいと思います。
子供の頃はめんどくさいとかあまり思わずに友達とワイワイ話しながら楽しんでやっていた気がするけど、大人になって孤独に袴を外していると少し空しくなりました(笑)
胞子嚢と袴を取り除き、水でしっかり洗って下処理は完了。
アク抜きの必要性と方法
ただ、ここから本当は「アク抜き」をする必要があるようです。
ツクシには「チアミナーゼ」というビタミンB1を分解する酵素が含まれており、過剰に摂取するとビタミンB1欠乏症(脚気などの原因になる)を引き起こす可能性があるんだとか。
ツクシ以外ではワラビやぜんまいといった山菜やコイやフナなどの淡水魚、ハマグリなんかにも含まれているそうです。
このチアミナーゼはアク抜きによって失活化できるので、安全に食べるためには必要な工程だと言えるでしょう。
アク抜きの方法は以下の通りです。
- 沸騰したお湯に塩と酢を少量加える
- 下処理したツクシを20〜30秒茹でる
- ザルにあげ冷水にさらす
これでアク抜き完了。その日に使い切れない場合は冷蔵保存することで、2〜3日はもちます。
でも、私が子供の時にバター炒めを作った際には、アク抜きをした記憶がないんですよね…。
調べてみると、チアミナーゼは茹でる以外にも加熱することで失活するらしいのです。
それなら、しっかりとフライパンで焼けば問題ないのかなと思いました。
しかし、チアミナーゼにもいろいろなタイプがあるようで、簡単に活性を失うものもあれば、80度以上での加熱でようやく失活し始めるもの(アナフェというアフリカの芋虫に含まれるチアミナーゼ)もあるとのこと。
安全を第一に考えるなら、やはりアク抜きをした方が賢明だと言えそうですね。
ツクシをバター炒めにして食べてみた
ツクシは、炒め物や和え物、卵とじ、天ぷらなど、様々な料理に使えます。
その中で今回私が選んだのは、やっぱり懐かしの思い出料理「バター炒め」です。
ツクシのバター炒めの作り方
ツクシのバター炒めの作り方は以下の通り。
- フライパンにバターを溶かす
- 下処理をしたツクシを炒める
- ツクシに火が通ったら塩胡椒で味付けする
たったこれだけの簡単シンプルな料理です。
懐かしのバター炒めの感想
少し気になったのはバター炒めにした後のツクシの「嵩」。
下処理時にはまずまずの量があったはずなのに、完成時にはこんなに少なくなってしまいました。
茎に結構な水分を蓄えていたのが加熱することで飛んでしまいちっちゃくなってしまったんでしょうね。
子供の頃にたくさん採ったはずなのに実際食べたのはほんの少しだったという記憶は間違ってなかったみたいです。
肝心の味はバター(マーガリンがメインだけど)のコクや風味とツクシのほのかな苦みが絶妙に絡み合い、塩胡椒の塩梅も良く、とても美味しかったです。
ツクシの味をもう少し分かりやすく説明すると、筋っぽさが少なくてホクホク感のないアスパラガスみたいな感じ?
若干塩胡椒が効きすぎていたかもしれないけど、子供の頃に食べたあの味とよく似ていてノスタルジックな気持ちになりました。
さいごに
子供の頃に友達と一緒にツクシを採って料理をしたことを思い出し、久しぶりにツクシを採取してバター炒めを作ってみました。
バターのコクや風味とツクシの独特の食感や苦味はあの頃感じたものとよく似ていて懐かしい気持ちになりました。
ツクシを通して春を感じられただけでなく昔の思い出に浸ることもでき、とても有意義な時間を過ごせました。
ツクシはバター炒め以外にも和え物や天ぷらなど色んな料理にしても美味しいらしいので、来年はまた違った料理を作ってみたいと思います。
#ツクシ #ツクシのバター炒め
参考にさせていただいた記事・サイト