前回は新型コロナウイルスの影響で増えたデスクワークによる健康問題のひとつ「長時間の座りっぱなし」についての対策を書きました。
→当ブログの記事:座りすぎは危険!弾性着圧ストッキングの効果とおすすめ商品
長時間のデスクワークによって起こる不調は、座りっぱなし問題以外にも「眼精疲労」や「肩こり」「手の痛み」など、数多くあります。
今回は、前回の記事内でも少し触れた、肩こりや眼精疲労対策に効果的な漢方薬【葛根湯(かっこんとう)】について書いてみたいと思います。
葛根湯は肩こりや眼精疲労、筋緊張性頭痛に効果的
葛根湯は最も有名な漢方薬のひとつで、基本方剤といわれる「桂枝(けいし)」「芍薬(しゃくやく)」「生姜(しょうが)」「大棗(たいそう)」「甘草(かんぞう)」に「葛根(かっこん)」「麻黄(まおう)」を加えたものです。
寒気や頭痛、肩こり、手足の冷えなどが特徴の「風寒型風邪」の引きはじめに葛根湯を飲むと非常に効果的です。そのため、「葛根湯=風邪薬」と思っている人も多いかもしれませんね。
しかし、葛根湯は風邪だけではなく「肩こり」や「眼精疲労」、「筋緊張性頭痛」にも効果があります。
漢方では風邪を「寒い風邪(風寒型)」と「熱い風邪(風熱型)」の2種類に大別しています。
「風寒型」は寒気が特徴で、「風熱型」は炎症症状が主体で発熱や咽頭痛、黄色い痰などが特徴です。
日本人の頭痛の中でも最も多く、15歳以上の約5人に1人が悩んでいる頭痛です。
頭全体か後頚部に締め付けられるような圧迫感のある鈍い非拍動性の痛みが起こるのが特徴です。
頭痛の頻度が時々である「反復性緊張性頭痛」は、長時間同じ姿勢で作業することによる肩や首周辺の筋肉の緊張が原因とされています。
一方、頻度がほぼ毎日の「慢性緊張性頭痛」は、筋肉の緊張に加え精神的なストレスが誘因になると言われています。
確かに葛根湯のパッケージには「風邪の引きはじめ」「頭痛」「肩こり」という文言が記載されています。
ただ、数年前までは風邪を治すのが主な目的で、それに伴う頭痛や肩こりに多少効果があるくらいなのだろうと思っていました。
医師も認める葛根湯の肩こり・眼精疲労・筋緊張性頭痛改善効果
しかし、仕事の関係で仲良くなった医者たちが口を揃えて「風邪とは関係なく、肩こりや眼精疲労、”筋緊張性”頭痛には葛根湯が効く」というので試してみたところ、短時間(30分から1時間程度)で効果を実感し、それ以来愛用するようになりました。
葛根湯の原料である葛根や芍薬には鎮痛作用があり、葛根に関しては首や肩の凝りを取る作用もあるそうです(上半身の炎症には葛根湯が良いらしい)。
葛根湯によって体が温められ、筋肉がほぐれて凝りが取れることで、肩こりや眼精疲労(目周辺の筋肉をほぐす)、筋緊張性頭痛が改善するのでしょう。
さらに、体を温めることで血行が良くなり、キニンなどの痛み物質が血流によって取り除かれることで、改善効果を実感しやすいとのことです。
葛根湯のデメリット:主要原料麻黄に含まれるエフェドリンに注意
引きはじめの風邪に効果が大きく、肩こりや眼精疲労、頭痛にも効果がある葛根湯。
これだけ聞くとまるで魔法のアイテムのようですが、やっぱり薬は薬。デメリットももちろんあります。
私は医者ではないので細かいデメリットは分かりませんが、一番気になったのは葛根湯の主要原料のひとつ「麻黄」の主成分である【エフェドリン】です。
エフェドリンは心臓や血管に負担をかける
葛根湯は比較的副作用が少ない漢方薬と言われていますが、エフェドリンは心臓や血管に負担をかける交感神経刺激薬なので、高血圧や心臓病、脳卒中の既往歴など、循環器系に疾患がある人は要注意です。
妊婦さんにも使うべきではないという意見もあります。
私自身、葛根湯を飲むと動悸がすることがあり、これは大丈夫なのかと医者に聞いたところ、上のような注意事項を教えてもらいました。
麻黄は強い発汗作用をもち、体を温めるので風邪には効果が大きいらしいのですが、心臓や血管に負担をかけるのはちょっと怖いですよね…。
麻黄を抜いて桂枝を加えたマイルドな葛根湯「桂枝加葛根湯」
風邪ではない状態の肩こりや眼精疲労、筋緊張性頭痛におすすめなのが【桂枝加葛根湯】です。
桂枝加葛根湯と葛根湯の成分の違い
葛根湯の上に「桂枝加」という文言がついていますが、この桂枝加葛根湯は葛根湯から麻黄を抜いて、桂枝(クスノキ科ニッケイ属で香辛料として使われるシナモンの仲間)を加えたものです。
イトーの葛根湯とサンワの桂枝加葛根湯の成分を見ると、桂枝加葛根湯のほうには麻黄(マオウ)が入っていないのが分かりますね。
あれ?桂枝(ケイシ)なんて入っていないじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、「ケイヒ」と書かれているのがそれです。
桂枝(ケイシ)と桂皮(ケイヒ)は植物自体はクスノキ科ニッケイ属で同じなのですが、”部位”が異なります。桂枝は若い細枝またはその樹皮(直径1cm以下の枝を切断したもの)、桂皮は木の幹の皮を一定の幅で剥ぎ取ったものを指すようです。
しかし、日本薬局方には桂皮の規定しかないので、桂枝加なのに成分には桂枝が記載されていないというわけなんですね。ややこしい!
とにかく、葛根湯にはもともと桂皮もしくは桂枝が入っていますが、桂枝加葛根湯はさらに桂枝を加えていると理解すればいいと思います。
桂枝と麻黄はともに発汗作用が特徴ですが、桂枝の発汗作用は麻黄に比べるとマイルドで副作用のリスクが低いとのことです。エフェドリンパワーは恐るべしです。
なので、風邪に対する効果はエフェドリンパワーが期待できる通常の葛根湯のほうが強力かもしれません。
でも、風邪を引いていなくて肩こりや眼精疲労などを改善したい場合は、桂枝加葛根湯でも十分でしょう。
薬である以上、全くリスクがないとは言えませんが、エフェドリンが入っていない分、安心できるのではないでしょうか。
まとめ
肩こりや眼精疲労、筋緊張性頭痛に悩む人におすすめなのが、葛根湯の変種である桂枝加葛根湯です。
医師も認める葛根湯の効果を期待しつつ、副作用の心配が少ない漢方薬を探しているなら、桂枝加葛根湯がぴったりでしょう。
桂枝加葛根湯は、葛根湯から麻黄を抜いて桂枝を加えたもので、麻黄に含まれるエフェドリンによる心臓や血管への負担を軽減しています。
風邪に対する効果は通常の葛根湯に劣るかもしれませんが、肩こりや眼精疲労、筋緊張性頭痛の改善には十分な効果が期待できます。
ただし、桂枝加葛根湯は一般的な薬局では取り扱いが少ないので、漢方薬を扱う専門店や通販サイトで探してみてください。私はいつもサンワや東洋の桂枝加葛根湯を楽天市場で購入しています。
薬である以上、完全にリスクがないとは言えませんが、エフェドリンを気にせず服用できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
肩こりや眼精疲労で悩んでいる人は桂枝加葛根湯を試してみてはいかがでしょうか。自分に合った漢方薬を見つけることで、快適な毎日を送れるようになるかもしれません。
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参考にさせていただいた記事・サイト